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 ウトロ市街の一休屋前から山側の道を約1.2km進むと「つくだ荘」が見えてくる。昭和58年(1983)の開業で、「国民宿舎桂田」の姉妹宿。平成18(2006)年に別館を新築。家族風呂2室確認。温泉街から離れているせいか、日中の日帰り客は意外に少ないようで、ほとんど貸切状態。ウトロ温泉事業協同組合が管理する混合泉を引いている。
  2014年、世界自然遺産の宿 しれとこ村」に改名。

◇基本データ
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■ 斜里町ウトロ中島125、入浴料:600円、入浴時間:15時~22時

公式HP 


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 受付で湯銭を払って長い廊下を伝っていくと、“くまの湯”と呼ばれる浴舎に行き着く。

◇温泉分析書
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左:2013/9/5撮 右:2008/8/19撮
 平成23年3月14日に作成した温泉分析書(北海道薬剤師会公衆衛生検査センター)。泉温:59.8℃(気温:-2.8℃)、湧出量:※ℓ/分(動力揚湯)、pH値:6.8、溶存物質:8.347g/kg、成分総計:8.740g/kg、泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素泉(等張性中性高温泉)(旧泉質:含重曹-食塩泉)

◇温泉成分に影響を与える項目
 特に掲示はないが、追加4項目該当なし。(源泉掛け流し)

 しれとこ温泉混合泉が(6号井、9号井、10号井、11号井)から(6号井、9号井、10号井、11号井、12号井)となり、新たに12号井が追加されている。12号井がいつごろ掘削したのか定かでないが、10年毎の温泉分析にしては少し早いので平成23年度に完工した源泉井の可能性がある。
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6号井(地質研コード129-019):ウトロ香川306番地
9号井(地質研コード129-028):ウトロ香川48-1番地
10号井(地質研コード129-031):ウトロ香川88番地
11号井(地質研コード129-033):ウトロ香川49番地
12号井:ウトロ香川206番地

 国土地理院のウォッちずを利用して源泉井の番号を振ってみた。11号井・12号井の♨マークは鉛筆で記入。9号井、11号井の番地はmapionに載っていないので、♨マークの位置はアバウトである。
 11号井がある49番地は温泉試料の採水地になっていることから、同じ場所の地下タンクで混合した後、ウトロの各温泉施設に配湯していると考えられる。6号井は知床第一ホテル敷地、10号井は廃業した「温泉民宿みどり荘」の湯元と呼ばれた源泉井。ちなみに、「みどり荘」の経営者だった松本武雄さんがウトロ温泉事業協同組合の温泉管理者をしていた(現在は息子さんが引き継ぐ)。統合版DVD索引図には、12号井の該当はないので、新しい掘削井と推定できる。

※ウトロ温泉事業協同組合管轄の温泉利用施設
 つくだ荘、ホテル知床、知床第一ホテル、プリンスホテル風なみ季(内風呂で使用。露天風呂は赤澤温泉?)、夕陽のあたる家(内風呂で使用。露天風呂は赤澤温泉)、民宿たんぽぽ、グランドホテル北こぶし(露天風呂付客室に使用。展望大浴場は自家源泉)、夕陽台の湯、足湯シリエトク。

●参考資料
「知床から―地の果て観光文化のまちづくり」(西村一郎著、連合出版)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集~1990」(北海道立地下資源調査所)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集~1990索引図」(北海道立地下資源調査所)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集1991~1995」(北海道立地下資源調査所)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集1991~1995索引図」(北海道立地下資源調査所)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集1996~2000」(北海道立地質研究所)
「北海道地熱・温泉ボーリング井データ集1996~2000索引図」(北海道立地質研究所)
「北海道地熱・温泉 ボーリング井データ集および索引図 「北海道における地熱 ・温泉利用の現状(2007)(統合版DVD)(北海道立地質研究所)

◇内風呂(男湯)
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 壁面を木の内装材で仕立てたシンプルな浴室に、湯温の異なる湯船2槽、シャワー付カラン8台。シャンプー・ボディソープ完備。

・あつ湯
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 湯口のある左側を「あつ湯」、右側を「ぬる湯(中温湯)」と便宜上呼んでおく。湯口から10ℓ/分ほど注いでいる。知覚的には、金気・薬品臭、金気炭酸味・塩味。溢れた湯は湯縁からのオーバーフロー及びぬる湯側に流れていく。かなり熱い湯である。
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2013/9/5、14時20分~40分、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水し、50℃で計測)。源泉100%かけ流しで塩素系薬剤未使用。
湯口:温度50.4℃、pH6.5、ORP値は182mvに収束した。
あつ湯:温度44.3℃、pH7.0、ORP値は240mvに収束した。

・ぬる湯
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 ぬる湯でも42℃オーバーしている。溢れた湯は湯縁からオーバーフローしている。つるすべした肌触りの浴感である。しばらくすると、食塩泉特有のべたつき感が優勢となってくる。浴後は汗が止まらないほどである。
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2013/9/5、14時20分~40分、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水し、50℃で計測)。源泉100%かけ流しで塩素系薬剤未使用。
ぬる湯:温度42.5℃、pH7.1、ORP値は244mvに収束した。

◇電位-pH図
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  算式を利用して標準水素電極基準に変換してから電位-pH図を作成。Ehは図表の通り。
 いずれも還元系にあり、温泉としての鮮度は普通に良好と考えられる。「足湯シリエトク」と比べると、ORP値が高いのが気になる。引湯距離によるものか、それともスケール除去薬品のせいなのかいまいち不明。

・あつ湯AI(△)(エージングの進行度mv)
 ORPeq(平衡値mv)=(0.84-0.047×7.0)×1000=511
 AI(△)=511-433≒78