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 芽登市街から道道88号線(本別留辺蕊線)で約15km走行すると案内看板が立っている。そこから糠南林道に乗り換え、砂利道を約3.7km進んでいくとヌカナン川沿いに原生林を背にした赤い屋根の「芽登温泉ホテル」がある。日本秘湯を守る会会員旅館。
 明治34(1901)年、福島県上真野村出身の伊東重記は、ビリベツ川上流に温泉があると聞き、酋長(オテナ)の本田トベシベの案内で温泉を発見する。本別町史によると、伊東重記は、明治32(1899)年、美里別地区に入地し開拓後、伊東牧場を経営していたとある。美里別の牧場が軍馬補充部用地になったので、喜登牛(キトウシ)の3百町歩を払いさげてもらい明治41(1908)年ごろ喜登牛で牧場経営にあたる。重記は、本別外五村戸長役場総代人、本別村村会議員、西足寄村村会議員も歴任した名士だったようだ。
 温泉を発見した後、重記は湯治の湯小屋を建て温泉の許可を出願する。温泉許可を受けるには、土台付き、壁囲いが条件であった。明治37(1904)年に許可が下りて美里別温泉(後に芽登温泉に改称)を開湯する。牧場経営などで忙しかったせいか、最初のうちは利用者に自由に使わせていたようだ。大正4(1915)年に重記は芽登温泉に移り住んで本格的に温泉経営を行う。その後、長女しげ夫妻に任せ、同じ頃、足寄太(旧西足寄村の前身)において公衆浴場兼旅館の「有馬湯」(足寄町南2条1丁目)を開業する。昭和6(1931)年ごろ、「有馬湯」を売却し、再び「芽登温泉」の温泉経営に携わる。昭和18年(1943)に重記が没した後、5女の伊東チトセが引き継ぐ。昭和52(1977)年にチトセが他界した後、チトセの長兄の伊東鋼四郎が引き継ぎ、昭和57年(1982)に約6000万円を投じて、施設の新築を行っている。昭和61(1986)年、鋼四郎の没後、長男の伊東謙二が引き継ぎ、大露天風呂の整備を行った。平成27(2015)年4月に新規の混浴露天風呂が完成し、『巨岩の湯』と命名。現在は5代目の伊東司さんが湯守を勤めている。


●参考資料
「足寄町史」「足寄百年史上巻」「足寄百年史下巻」「本別町史」   

◇基本データ
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■足寄町芽登2979番地、入浴料:大人550円、日帰り営業時間:10時30分~20時

■公式HP
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 養殖池には以前、食膳に提供していたテラピアが繁殖している。手を入れると面白いように寄ってくる。

◇宿泊
 公式HPより一泊2食付きプラン(梅) Eタイプ旧館和室6畳で予約。13,530円(消費税込)+150円(入湯税)-4,735(Go To トラベル給付金、地域共通クーポン2,000円)。チェックイン15時、チェックアウト10時。
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 エレベーターなし。旧館2階の廊下。
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 案内されたのは2階旧館和室6畳(福寿草)。19時頃、スタッフが布団を敷きに来る。フリーWi-Fi接続可(パソコンは不可)。
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 旧館2階の洗面所とトイレ。

◇食事
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 食事は食堂で取る。夕食は18時~20時、朝食は7時~8時30分。

・夕食
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 夕食は梅プラン。刺身、野菜サラダ、酒肴盛り3点、茶碗蒸し、酢の物、えびマヨ、ちゃんちゃん焼き、香の物、ご飯、味噌汁。ご飯のお代わり自由。
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 デザートの焦がしプリン、コーヒー

・朝食
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 セルフコーナー。カレーもある。
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 朝食の和定食
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 セルフコーナーより。卵は温泉卵、生卵、目玉焼きから一品
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 コーヒー、ぶどうジュース、牛乳、白玉あんこ

■大浴場
 川側浴場は女湯、山側浴場は男湯。20時に男女入れ替えし、10時30分に通常に戻る。巨岩の湯は男性専用・女性専用・混浴・貸し切りの時間がある。

◇温泉分析書(脱衣所前掲示)

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 昭和33年当時の温泉分析書の手書きボード
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左2020/10/7撮 右2012/10/26撮
平成31年4月11日に作成した温泉分析書(第一岸本臨床検査センター)。泉温:58.3℃(気温:4℃)、湧出量:※ℓ/分(自然湧出)、pH値:9.5、溶存物質:0.275g/kg、成分総計:0.275g/kg、泉質:アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)(旧泉質名:単純温泉)

◇温泉成分に影響を与える項目
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・4項目該当なし(熱交換器で温度調整)。源泉100%掛け流し。

◎山側浴場(通常男湯)
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 脱衣所にコインロッカー(100円返却式)あり。

◇内風呂

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 板張りの浴室に小浴槽(高温湯)と大浴槽(低温湯)を配置。シャワー付カラン4台、シャンプー・ボディソープあり。

・大浴槽(低温湯)
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 ほとんど無色透明の湯。注湯量は約20ℓ/分。知覚的には微弱硫化水素臭、たまご味・微弱塩味。湯溢れた湯は湯縁からオーバーフローしている。つるつるすべすべの浴感が堪らない。
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2020/10/7、19時30分~45分、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口(熱交換器使用):温度44.8℃、pH値9.54、ORP値は-328mvに収束した。
浴槽:温度38.6℃、pH値9.50、ORP値は-291mvに収束した。

・小浴槽(高温湯)
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 ほとんど無色透明の湯。注湯量は約10ℓ/分。知覚的には大浴槽に準ずる。溢れた湯は湯縁からオーバーフローしている。高温湯だが、体の芯から蕩けそうな感覚がある。
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2020/10/7、19時30分~45分、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口:温度49.7℃、pH値9.52、ORP値は-300mvに収束した。
浴槽:温度44.0℃、pH値9.32、ORP値は-269mvに収束した。

◇大露天風呂
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 中央に大岩を配した大露天風呂。巨岩の湯が出来る前の混浴露天風呂。周囲の風景にマッチした造りで湯底は滑らかで歩きやすい。無色透明の湯。
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 木を模したコンクリの湯口❶から約20ℓ/分落水。側壁の湯口❷より約10ℓ/分注湯。打たせ湯の注湯量は約10ℓ/分。知覚的には微弱硫化水素臭、タマゴ味・微弱塩味。
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 2020/10/7、 15時30分~16時、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口❶:温度49.7℃、pH値9.36、ORP値は-314mvに収束した。
湯口❷(熱交換器使用):温度45.6℃、pH値9.34、ORP値は-318mvに収束した。
打たせ湯(熱交換器使用):温度39.5℃、pH値9.30、ORP値は-316mvに収束した。
浴槽:温度41.1℃、pH値9.13、ORP値は-197mに収束した。

◎巨岩の湯(混浴露天風呂)
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 2015年4月に完成した巨岩の湯(混浴露天風呂)。脱衣所は男女別になっている。
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 時間により男性専用・女性専用・混浴・貸し切りとなる。混浴時は当館の混浴着が必要。日帰りの場合は、混浴着300円で、宿泊客は無料。
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 一度に20人前後が入浴できるほど広い。
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 ヌカナン川がまじかに見える。
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 湯口は並んで2か所ある。注湯量は湯口❶が約20ℓ/分、湯口❷が約5ℓ/分。知覚的には微弱硫化水素臭、タマゴ味・微弱塩味。
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2020/10/7 15時30分~16時、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口❶:温度49.6℃、pH値9.25、ORP値は-323mvに収束した。
湯口❷(熱交換器使用):温度40.7℃、pH値9.51、ORP値は-321mvに収束した。
浴槽:温度42.6℃、pH値9.42、ORP値は-271mvに収束した。

・遊離残留塩素測定
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2020/10/7、19時頃、浴槽で試料をミニボトルで採取し、遊離残留塩素測定器で遊離残留塩素濃度を測定。
測定値は0.00ppmとなり、遊離残留塩素の未検出を確認した。

◇電位-pH図

キャプチャ
算式を利用して標準水素電極基準に変換してから電位-pH図を作成。Ehは図表の通り。
いずれも還元系にあり、温泉の鮮度は良好である。

・巨岩の湯AI(△)(エージングの進行度mv)
 ORPeq(平衡値mv)=(0.84-0.047×9.4)×1000=398.2
 AI(△)=398.2-(-78)≒476

◎川側の浴場(通常女湯)
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 20時に男女入れ替えする。脱衣所にコインロッカー(100円返却式)あり。

◇内風呂
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 タイル張の浴室に小浴槽(高温湯)と大浴槽(低温湯)を配置。シャワー付カラン4台、シャンプー・ボディソープあり。

・大浴槽(低温湯)
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 ほとんど無色透明の湯。注湯量は約20ℓ/分。知覚的には微弱硫化水素臭、たまご味・微弱塩味。湯溢れた湯は湯縁からオーバーフローしている。つるすべの浴感あり。
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2020/10/8、5時30分~6時、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口(熱交換器使用):温度43.2℃、pH値9.54、ORP値は-338mvに収束した。
浴槽:温度41.8℃、pH値9.48、ORP値は-281mvに収束した。

・小浴槽(高温湯)
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 ほとんど無色透明の湯。注湯量は約10ℓ/分。知覚的には低温湯に準ずる。湯溢れた湯は湯縁からオーバーフローしている。熱めの湯だが、つるすべ感は感じられる。
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2020/10/8、5時30分~6時、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口:温度49.3℃、pH値9.52、ORP値は-330mvに収束した。
浴槽:温度44.4℃、pH値9.36、ORP値は-265mvに収束した。

◇小露天風呂
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 川沿いの露天風呂。男湯の露天風呂よりはこじんまりしている。ほとんど無色透明の湯。
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 木を模したコンクリの湯口❶から約20ℓ/分落水。打たせ湯のような湯口❷より約10ℓ/分注湯。知覚的には微弱硫化水素臭、タマゴ味・微弱塩味。
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2020/10/8、5時30分~6時、浴槽内でORP計測(湯口はミニボトルで採水)。源泉100%掛け流しで、塩素系薬剤未使用。
湯口❶:温度49.6℃、pH値9.44、ORP値は-344mvに収束した。
湯口❷(熱交換器使用):温度44.6℃、pH値9.56、ORP値は-324mvに収束した。
浴槽:温度40.6℃、pH値9.37、ORP値は-167mvに収束した。

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 巨岩の湯への通路

・遊離残留塩素測定
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2020/10/8、6時頃、浴槽で試料をミニボトルで採取し、遊離残留塩素測定器で遊離残留塩素濃度を測定。
測定値は0.00ppmとなり、遊離残留塩素の未検出を確認した。

◇電位-pH図
キャプチャ
算式を利用して標準水素電極基準に変換してから電位-pH図を作成。Ehは図表の通り。
いずれも還元系にあり、温泉の鮮度は良好である。

・小露天風呂湯AI(△)(エージングの進行度mv)
 ORPeq(平衡値mv)=(0.84-0.047×9.4)×1000=398.2
 AI(△)=398.2-28≒370